愛人契約は、表面的には「大人同士の合意関係」に見えますが、法的には非常に繊細な位置づけにあります。お互いが納得していても、契約の内容や金銭の受け渡し方によっては、違法行為とみなされる可能性があります。契約を結ぶ前に法律的なリスクを理解し、後悔のない判断をすることが大切です。
1. 愛人契約は法律上の「契約」として有効か？
日本の法律では、愛人契約の多くは公序良俗（民法90条）に反するとして無効とされる場合があります。つまり、金銭の支援と性的関係が直接的に結びつく内容は、たとえ書面にしても法的効力を持たないのです。
ただし、「性的関係を前提としない経済支援」「メンタルケアや交際支援」といった内容であれば、ケースによっては契約の一部が有効とされることもあります。しかし、線引きは非常に曖昧で、最終的な判断は裁判所の解釈に委ねられます。
2. 売春防止法との関係
最も注意すべきは、売春防止法との関係です。この法律では、金銭や物品などの対価と引き換えに性的行為を行うことを禁止しています。愛人契約であっても、内容が「金銭支援＝性的関係」という構造であれば、売春行為とみなされるおそれがあります。
実際に摘発されるケースは稀ですが、もしトラブルになった際には刑事事件として扱われる可能性もあるため、軽視は禁物です。
3. 不倫・配偶者のある相手との関係
相手が既婚者の場合、愛人契約は不貞行為に該当します。これにより、配偶者から慰謝料請求を受けるリスクがあります。慰謝料の相場は50万〜300万円程度が一般的で、精神的苦痛や関係の継続期間などによって変動します。
「知らなかった」では済まされないケースも多く、相手が既婚であることを知りながら関係を持った場合は、共同不法行為として民事上の責任を問われる可能性が高いです。
4. 契約書を作る際の注意点
愛人契約書を作成する際には、内容が法に触れないかどうかを慎重に確認する必要があります。以下の点を意識しておくと良いでしょう。
- 性的関係を明記しない：契約書に性的行為を条件として記載すると、即座に無効となるリスクがあります。
- 金銭支援を「生活サポート」「交流費」などの形で表現：曖昧な表現であっても、金銭の流れを合理的に説明できるようにしておきます。
- 弁護士など専門家への相談：第三者の目線を入れることで、違法性のリスクを減らすことができます。
5. 金銭授受のトラブルを防ぐために
支援額や支払い方法に関する誤解は、愛人関係で最も多いトラブルの一つです。現金手渡しでは証拠が残りにくく、後から「支援されていない」「返済義務がある」といった争いに発展することもあります。安全な方法としては、送金履歴を残す・条件をメッセージで明確にすることが重要です。
6. 個人情報と秘密保持の重要性
愛人契約は法的に不安定な関係であるため、プライバシー保護と情報管理が極めて重要です。相手の個人情報を悪用したり、関係内容を他人に漏らす行為は名誉毀損・プライバシー侵害として損害賠償請求の対象になることがあります。契約時には「秘密保持条項」を加えることをおすすめします。
7. まとめ：合意よりも法的リスクを優先する
愛人契約は、表面上は自由な大人の関係のように見えても、法律的には非常にグレーゾーンの存在です。契約書を交わしたからといって必ずしも自分を守れるわけではありません。むしろ、内容次第では自ら法的リスクを抱えることになります。感情よりも冷静な判断、そして必要に応じた専門家への相談を忘れないこと。それが、後悔しない愛人契約への最初の一歩です。
