「愛人関係」という言葉には、どこかグレーな響きがあります。道徳的には否定的に見られがちですが、法的にはどのように扱われているのでしょうか。実際のところ、愛人関係そのものが刑法で直接的に罰せられることはありません。しかし、特定の条件下では「不貞行為」や「損害賠償請求」の対象となる場合があります。本記事では、日本の法律に基づいて、愛人関係が違法か合法かを整理しながら、注意すべきポイントを解説します。
1. 刑法上では愛人関係は「犯罪」ではない
まず前提として、愛人関係は刑法上の犯罪には該当しません。つまり、警察に逮捕されたり、刑罰を受けたりすることは基本的にありません。日本では「不倫」や「愛人契約」といった個人的な関係は、刑事事件としてではなく「民事上の問題」として扱われます。したがって、法律の観点では“違法行為”ではなく、“不法行為”の可能性がある、という点を理解しておく必要があります。
2. 民法上では「不貞行為」として損害賠償の対象になる
民法第709条に基づき、配偶者のある人物と肉体関係を持つことは「不貞行為」と見なされます。その結果、配偶者(つまり本妻や夫)から慰謝料請求を受ける可能性があります。たとえ愛人が「独身」であっても、相手が既婚者である場合には、この責任が問われることになります。慰謝料の金額は、関係の期間や精神的苦痛の度合いなどによって異なりますが、一般的には100万円〜300万円程度が相場とされています。
3. 愛人契約書を交わしても、法的効力は限定的
中には「トラブル防止のために契約書を作れば安心」と考える人もいますが、愛人契約書には法的な限界があります。内容によっては公序良俗(民法90条)に反するものとして無効になる場合があります。たとえば「毎月◯万円を支払う代わりに関係を続ける」といった約束は、性や愛情を対価とする契約と見なされ、無効と判断される可能性が高いのです。
4. 慰謝料請求を避けるための注意点
既婚者との関係を続ける場合、相手が「配偶者と離婚の意思を持っているか」「夫婦関係が実質的に破綻しているか」を確認することが重要です。離婚協議中である場合や、すでに別居状態であることが明確であれば、不貞行為と判断されにくくなります。また、メールやSNSなどに証拠が残る時代ですので、軽率なやり取りには十分注意が必要です。
5. 社会的制裁・ reputational risk にも注意
法的責任だけでなく、愛人関係は社会的信用を失うリスクもあります。職場での評価や人間関係に影響することもあり、場合によっては昇進・転職に支障をきたすことも。特にSNSやデジタル証拠が拡散しやすい現代では、倫理的リスクと法的リスクは密接に結びついています。
まとめ:愛人関係は「合法」でも「安全」ではない
結論として、愛人関係自体は違法ではありません。しかし、相手が既婚者である場合、その関係は「不法行為」として慰謝料請求の対象になり得ます。また、社会的な信頼を失う可能性もあるため、軽い気持ちで関係を持つことは危険です。法的リスクを理解したうえで、冷静に自分の立場と未来を見つめることが、トラブルを防ぐ最善の方法と言えるでしょう。
